波尾の選択 傑物たちの至言に触れて

名言を超えた至言。生を突き詰める傑物達。至言に触れて触発された想いを綴ります

優しい曲-4 「イン・ア・センチメンタル・ムード」デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン

イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)/ デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン(Duke Ellington & John Coltrane)


 あぁ、圧倒的な優しさ。

このプレイの前に言葉を書くだなんて、何という不毛。無謀な行為。

ただ聴くべし。


Duke Ellington & John Coltrane - In a sentimental mood

おしまい。

 

 

 

 

としてしまったら、この文は毎回そうなってしまうので、

無力を感じながら書くのである。

 


Duke Ellington's Original "In a Sentimental Mood"

 

1962年9月録音、1964年発売の共演アルバムの収録曲7曲が全てワン・テイク

ワンテイク=一発撮り、当時のJazzでさえ何テイクか収録してベストを選択してアルバムを制作することが普通だったけれど、デジタル技主導の現在では何度もプレイして一音一音を切り貼りするのがあたり前。

やはり音楽への向き合いの気合、姿勢そのものが違う。

1956年マイルス・ディヴィス(Miles Davis)が4枚分のアルバム収録を2回ワインテイクで制作したことが有名。

 デューク・エリントン、ジョン・コルトレーン共に自分のメンバーと普段プレイをしている同士が顔を合わせ、ワンテイクで済ませてしまうというもの凄さ。

 当然、ワンテイクならなんでも偉いわけでなく、プレイが駄目なら意味がない。むしろやり直せ。

 ロバート・デニーロの『レイジング・ブル』の足元にも及ばないレベルで、役作りのため「何キロ痩せた、太った」とやたら吹聴する最近の役者(メディア)。

映画、演技に見るものがないから話を逸らしているのかとさえ勘繰られるぞ(少なくとも私は勘ぐる)。

話を戻す。 

 アルバムのトップを飾るのがこの「イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)」。いきなりこんな至玉の調べで、さぁ聴くぞという構えをすべて剥がされ無防備にさせられてしまう。あまりにも甘美で優しく、身ぐるみ剥がされ天鵞絨(ビロード)で包まれたようになってしまう。

 あぁ。身体の力を抜かれすべて身を預けられる至上の時間。

「イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)」はデューク・エリントンが作曲し1935年にデューク・エリントン自身のアルバム初レコーディングされた。

 3分少々の中でリードを代わる代わるにアルト・サックスからバリトン・サックス、コルネットまで、えっと、今聴くとムードたっぷりに歌い過ぎている気が。

 この録音はポップ・チャートの14位まで上がった(JAZZがポップ・チャートの主流だった時代なんですな)。 

 このアレンジを聴くに、そう大上段に構えずリラックスした曲想だったと思われる。

夜の男と女がダンスをする為の曲。

 因みにアメリカのWikipediaによれば、デューク・エリントンのオリジナルはDマイナーで始まり主にFメジャーで録音されているが、ジョン・コルトレーンとの共演ではBフラット・マイナー7からEフラット・マイナー7で始めDフラット・メジャーの調で録音されたと書かれているように、トーンを下げることを選択していたわけだ。

イン・ア・センチメンタル・ムード( In A Sentimental Mood)written by=I. Mills、D. Ellington、M. Kurtz

後に作詞者としてマニー・カーツ、アーヴィング・ミルズがクレジットされている。

えっ?なぜ歌詞をつけたんだろう?

 まぁ、デューク自身が許諾したのだから他人がどうこういう必要もないのだけれど。

何万、何十万曲と聴いてきた曲のうちで、本当に良い歌詞の曲と問われ咄嗟に100曲も挙げられる自信がない。

 それほど歌詞というのは難しいものだと思っている。そもそも名メロディが存在して完結しているところに後から意味を付与するなんて、、暴挙。

 先に歌詞を書いてその歌詞に作曲をするシンガーソングライターはいますがね。

 

 有名曲だけあってカバー曲は500曲に迫る。

1957年にはデューク・エリントン(Duke Ellington)のオーケストラがエラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)と共演したアルバム『Ella Fitzgerald Sings The Duke Ellington Song Book, Vol. 2』に収録。しかしこの曲はギターだけが歌を引き立てる伴奏という格好歌。2分30秒少しだけれど、テンポを落としムードたっぷり。

CDではVOL.1とカップリングされ2枚組になっている。

 

1961年 サラ・ヴォーン(Sarah Vaghuan)は4分越えでゆったりと歌う。

踊るとしてもスローなダンス。

 

 

当然のことながら、デューク・エリントンとジョン・コルトレーンには紹介すべき名曲、名演がまだ数知れずあるけれど、奇跡的な邂逅を飾るこの曲で忘我で暑さから離れてください。

 

(記*波尾哲)


デューク・エリントン(Duke Ellington)

1899/4/29-1974/5/24(享年75歳)

ピアニスト、作曲家、偉大なジャズ・ミュージシャン

ジョン・コルトレーン(John Coltrane)

1926/9/23-1967/7/17(享年40歳)

サックス・プレイヤー、作曲家、偉大なジャズ・ミュージシャン