傑物の至言- 38 Paul Simon/ポール サイモン
~
Ten thousand people, maybe more
People talking without speaking
People hearing without listening
People writing songs that voices never share
And no one dared
Disturb the sound of silence
~
一万人、いやもっといるかな
喋っていながら話していない
聞こえていても聴いちゃいない
書かれた曲の気持ちは届かない
誰も自らあえて沈黙の音のまま放っておくのさ
『Sound of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)』Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)
Song & lyrics : Paul Simon(ポール サイモン)
有史以来、この星には誕生した何億、何兆曲の楽曲が産まれたのだろう。調べようもないし、その大半を聞くことは能わず、こうしている日々刻々とごまんと新曲が誕生しているだろう。
人間が生きていくには音楽が必要だ。
楽器が無くても、弾けなくても音楽は産まれる。
「オールタイム・ベスト」「無人島に持っていく100曲」を自分で時々やる。誰に発表するわけでもないのに、揉める。
「あれを選ぶならこっちか」
「一人一枚、一曲か?それも理論的じゃないよな」
「いやそもそも曲数を限定する設定に無理がある。
マーラーの「交響曲9番」もPuffyの『アジアの純真』も一曲だ。同一基準で選ぶこと自体が間違っている」
自分で勝手にやり始めながら「傑作に順位がつけられるか!」と自分に怒る。
結局、順位なしの書きかけのリストだけが何百回分もPC、iPhoneに残される。曲、映画、本、場所、店のリスト
『Sound of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)』は必ず音楽リストに入る。
冒頭の8音でもう連れていかれてしまう。
大変失礼、名誉毀損的な言い方を先に謝罪しておき書くがアメリカ人でこんなにまともな歌詞を書く人間がいたのか!と知った瞬間だった。
Bob Dylan(ボブ・ディラン)は周りで既に神格化され過ぎており、神格化している周りの人間に魅力が感じられなかったので、相当の時間Bob Dylan(ボブ・ディラン)を聴かなかった。
先にSimon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)にどっぷりだった。
どの曲の歌詞も素晴らしい。曲を書いているのは専らPaul Simon(ポール サイモン)だと後から知る。
若い人はひょっとして音楽の教科書とかCMで聴いたかもしれない。
1964年『Wednesday Morning, 3 A.M(水曜の朝、午前3時)』に収録されたのはPaul Simon(ポール サイモン)のギターだけのバージョン。
アルバムは売れず、Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)の二人はこのデビュー・アルバム一枚でデュオ継続は困難と諦めかけてSimon(ポール サイモン)はヨーロッパへ行ってしまった。
1965年、コロンビア・レコードの指示で本人達の知らないうちにエレクトリック・セクションをオーヴァーダビングし、さらに本人達に知らせもせずシングル・カットされた。売れた!
1966年にはBillboard Hot 100の全米1位となる。
同年そのシングル・バージョンをフィーチャーしたアルバム『Sound of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)』発売。
1968年映画『Graduate(卒業)』のサウンド・トラックの1曲にも採用された。
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Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)がレコーディングした時代、
1963/11/22 ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺され
1964/3/8 マルコム・XがOAAU(アフロアメリカン統一機構)を結成
1964/6/12 ネルソン・マンデラらが国家反逆罪で終身刑となる
加速する米軍の介入に国内世論が二分。
10/16 中国が5番目の核保有国に
という様な不安定な時代だった。
『Sound of Silence(サウンド・オブ・サイレンス)』はものを言わず聞こうとしない人々のSilence(サイレンス)=沈黙に語りかける形式を取る。
以前からこの歌詞を聴くと「silent majorityサイレント・マジョリティ」という言葉を連想した。
あ、どこかのグループの曲の話では一切ないので、悪しからず。
政治家はsilent majorityサイレント・マジョリティを反論しないのは肯定したことだと自己都合で解釈する。
しかし、私はsilent majorityサイレント・マジョリティという言葉から、じっと耐える人々の表情、心を感じる。
軽々に意見を大声で叫ばない、昔なら新聞に投書したりしない、テレビ局やメーカーにクレーム電話をかけない、今ならツイッターで責任も取れない様な大言壮語を匿名で投稿しない大勢のmajorityマジョリティ。
majorityマジョリティは発言しないからと言って唯々諾々と肯定している訳ではない、じっと観ている。聴いている。感じている。
良心を持っている。そう信じる。
それらが大きく振れた時にはダムを決壊させるパワーを持つのだ、と。
確かにアメリカ合衆国のように多民族多言語、州により法律が異なる様な国にいて「意見を言わないのは罪」という指摘もある。
しかしながら、「発言」は本来「行動」と同レベルの責任が生じるものだ。
身内や友達同士での軽口は別にして。
Paul Simon(ポール サイモン)が
Ten thousand people, maybe more
のくだりを歌う時、必ず観衆から反応が上がる。
決して一人一人は「1万人」という塊ではないのだ。
一人一人、家庭があり事情があり癖があり熱中できるものがあり感情を持つ、尊厳のある存在なのだ。
Paul Simon(ポール サイモン)は1964年からツァー活動引退を発表した昨年2018年に至るまでこの曲を歌い続けた。
冒頭、
Hello, darkness, my old friend
と「古い友達である、暗闇」に囁きかける様に歌い始める。
古い友達、昔から圧倒的に多い沈黙を守る人々のことなのか、
私にはPaul Simon(ポール サイモン)が産まれた瞬間から付き合っている自分自身の心に囁いている様に感じられる。
そして、この星の皆が全員、同じように自分に問うてみるがよい、
自分の心をちゃんと友達として大事に扱わないといけない、
そう囁かれている気がする。
普段は暗闇の様に見えにくくても、ちゃんと鼓動を止めずに何もかも感じ取っている、自分の中の「darkness、暗闇」。
1970年頃から実質解散状態でお互いにソロ活動に。
時々、揃ってみたり、メディアを通じて互いに悪口を言い合ったり。
1981/9/19 再結成チャリティコンサートをセントラル・パーク(NY)で行い50万人以上集めた模様は映像化されて今も売れている。
1982年来日公演
Simon & Garfunkel - The Sound of Silence (from The Concert in Central Park)
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その後も、また別行動で悪口を言い合い、何度か再結成したり。
2009年の再結成時の公演がまた映像化されているが、この時に受けた衝撃が見るたび甦る。
歌う速度、テンポを下げている、というその衝撃。
歳を取った歌唱で曲のキーを下げる場合はままあるが、
「歌うテンポが遅い!」と驚きながら、それが説得力を何倍も増していることが衝撃だった。
鳥肌が立ちっぱなしとはこのことだ。
声を張らず、より丁寧に。より囁く様に。
Simon & Garfunkel - The Sound of Silence - Madison Square Garden, NYC - 2009/10/29&30
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2006年『Time magazine(タイムズ)』は「世界で最も影響力のある100人」の中にPaul Simon(ポール サイモン)を選んだ。
1941/10/13 現在77歳
作詞家、作曲家、ヴォーカリスト、ギタリスト
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★こんなに有難い至言に遭遇させて頂きながらも、敬称略で書かせて頂くことをご本人、関係者にお詫び致します。
★こんなに有難い至言に遭遇させて頂きながらも、敬称略で書かせて頂くことをご本人、関係者にお詫び致します。
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『けだし名言、いや至言』
名言、いい言葉は、意外に誰でも口にすることがある。
話の流れでぽっと出る。日常的にもままあること。
それはそれで良いのだけれど、そのいい言葉はその瞬間だけの実感だったり、
はたまた誰かの借り物だったり、ということも多い。
私が紹介したいのは、一瞬の「名言」ではなく、
その人間の人生に裏打ちされた、その人間の奥底から到達した言葉。
それを「至言」と呼ぶ。
ただの名言、格言、金言ではなく、本質に迫る言葉が『至言』。
ただの有名人、著名人じゃなく、怪物級、規格外の人物が『傑物』。
その『傑物』の『至言』が放たれ、凡人にも何かが触発される。
泡立ち、鳥肌が立つ瞬間。そこから目を逸らすのを止めず考えてみる。