波尾の選択 傑物たちの至言に触れて

名言を超えた至言。生を突き詰める傑物達。至言に触れて触発された想いを綴ります

傑物の至言-33 Michael Haneke(ミヒャエル・ハネケ)

 

さまざまな解釈ができるエンディングを描いていますが、いまだに『隠された記憶』や『ピアニスト』のエンディングについて聞かれることはありますか。

「もちろん。観客が問題に向き合い続けてくれるなら、私は嬉しいよ。もし全てが説明されれば、すぐに忘れられてしまうと思っている。観客が向き合う必要がある問題を構成するという考えだね。『隠された記憶』のエンディングで、2人が語り合う内容について聞かれるけど、私が教えるわけではなく、自身で答えを見つけなくてはならない。ヒントはすべて作品に描かれているよ」

HAPPY END』公開時「タイムアウト東京」インタビューより

 

 頑固そのものの顔相。

ひねている、意地悪。

そう感じる視線で映画を創り上げる。

設定、テーマが何であれ、共通する強靭な視線。

1989年『Der Siebente Kontinentセブンス・コンチネント)』長編初デビュー作でロカルノ国際映画祭ブロンズレパード受賞

1992年『Benny's Video(ベニーズ・ビデオ)』テッサロニキ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞

1994年『71 Fragmente einer Chronologie des Zufalls(『71フラグメンツ)』』シカゴ国際映画祭ゴールデン・ヒューゴー賞

1997年『Funny Games(ファニーゲーム)』シカゴ国際映画祭監督賞と、国際映画祭で各賞を受賞しているのが信じ難いほどの衝撃的、徹底的に際限ない暴力の描写。

2008Funny Games U.S.A.(ファニーゲームU.S.A.)』主演Naomi Watts(ナオミ・ワッツ)のアメリカ版リメイクもMichael Haneke自身が監督。

 

 

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こんなことも言っている

ー呉宇森(ジョン・ウー)とタランティーノの映画を相変わらず監督は嫌悪するか

「彼らの作品は無責任だ。アメリカ的発想があって、この問題をタランティーノと議論しようとしても、それは不可能だ。彼はこちらの言うことを理解できずに、我々を単なるバカと思うだろう。2人が有能な映画職人であることは確かだ。ジョン・ウーはフレッド・アステアの大ファンで、アステアが踊りでやったことを自分は暴力でやる、なんて言っている。こうした映画作家は映画には実体は伴わないと考えていて、現実とは無関係だから何を描いても良いと考えている。」

(「DVDRamahttps://plaza.rakuten.co.jp/karolkarol/diary/200805040000/?scid=wi_blg_amp_diary_next より)

 

2001年『Pianist(ピアニスト)』で行き着く先のない性を執拗に描写。

Michael Haneke(ミヒャエル・ハネケ)の映画はただひたすらに「容赦がない」。

視線を緩めない。

 観る方は痛い。痛みが続くが観るのを途中で止められない。

以降

2005年『Caché(隠された記憶)』カンヌ国際映画祭監督賞

2009年『Das weiße Band(白いリボン)』カンヌ国際映画祭パルム・ドールゴールデングローブ賞外国語映画賞

2012年『Amour(愛、アムール)』カンヌ国際映画祭パルム・ドールアカデミー賞外国語映画賞

と、設定やテーマを広げてみせるが、よりMichael Hanekeん視線はより深く、厳しくなっていく。それにしても相変わらずの受賞荒らし。

 

 

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2017年『Happy End (ハッピー・エンド)』とても美しく綺麗な映像で穏やかなトーンのシーンが綴られていくが、、、、えっ!

 

 当然のことながらMichael Haneke(ミヒャエル・ハネケ)監督はこれら作品を意識的に撮ってきたわけで、監督自身が意地悪だからこういう映画になりました、というアマチュアなことではない。

 人間の奥を問い続ける。心の奥に蠢くもの。そのジュクジュクした、なにやら自分でも飼い慣らせないものが己の行為、人生を支配してしまうこと。誤魔化すことが大嫌いな人間なのだろう。

 

 いやぁ、傑物の監督の撮る映画はどれもが他の誰にも撮れないものだと改めて教えられる。誰の映画もこうはならない。

 Happy End (ハッピー・エンド)』は素晴らしい映画だが、この監督の他作品を見たことがないなら、最初にこの作品から観ることは勿体ない。制作順に観ていってからこのHappy End (ハッピー・エンド)』を観て欲しい。

 全部は無理と言うのなら、最低

『ファニービデオ』Benny's Video(ベニーズ・ビデオ』)』→『ピアニスト』→『Das weiße Band(白いリボン)』→『Amour(愛、アムール)を経てHappy End (ハッピー・エンド)』にたどり着いて欲しい。

 Michael Hanekeの凄みが堪能できること請け合いだ。

 

どうせ生きているのなら1つで多くの問いを抱えた方がいいじゃないか?

 

のっぺりした変化のない日常に疑問を持たない方は別だけれどね。

 

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Michael Haneke(ミヒャエル・ハネケ)

1942/3/23- 現在77歳

映画監督、脚本家

 

 

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『けだし名言』

 

ただの名言、格言、金言じゃなく、本質に迫る言葉が『至言』。

ただの有名人、著名人じゃなく、怪物級、規格外の人物が『傑物』。

 

その『傑物』の『至言』が放たれた奥底に迫りたい。