波尾の選択 傑物たちの至言に触れて

名言を超えた至言。生を突き詰める傑物達。至言に触れて触発された想いを綴ります

傑物の至言-40 Van Morrison (ヴァン・モリソン)

 

One for the money , two for the show (1に金、2にショー)』だなんて勘弁してくれよ。ロックは反体制でなくちゃ。ロックンロールとは自由なんだ。

 1に金なんてのは、ロックンロールの意味したところから余りにも掛け離れている。

 ロック・スターなんてものは存在しない、それは幻想だと言ってるんだよ。

 

 音楽業界なんてそんなに素晴らしいものじゃないし、素晴らしいものだったこともないということだよ。物事に投影されイメージは、そのもの自体よりもずっと大きいんだ。

1993年 ヴィクトリア・クラークによるインタビュー(翻訳:染谷和美)

 

「孤高のシンガー」、「来日していない最後の大物」「偏屈者」「変わり者」と呼ばれるヴァン・モリソン(Van Morrison)

 またこういう人です。

「~と呼ばれる」ってメディアがそうレッテル貼ってるだけだろ。

だいたい、メディアに愛想よく接しないと「インタビュー嫌い」「変わり者」「やっかいもの」「気難しい」「偏屈」「変人」扱いするのはメディア側だ。

 しかし徹底的に悪く書くとプレス招待(記者用の無料席)をくれないと困る、サンプルCDも貰いたいから「~と呼ばれる」と他人がそう呼んでいると聞きましたという態で書く。常套手段。

 

 だいたいが、無味乾燥な人間に「変わっている」と思われないなら藝術家ではないだろう。

 普通の、常識人が発想できないことを発想し、創造できるから藝術家なのだ。これは数式だ。

 常識人にとって「普通」の「容易に理解できる」ことが作品になる価値がない。

 メディアで勤務する学歴は高いが「普通」の連中がインタビューすると「何が聞きたいのか不明」「そもそも作品をちゃんと理解してインタビューに臨んでいない」から最初から位相が合っていない。

そんなインタビューをデビュー当時は1日に同じ質問を何回もされればたいていがインタビュー嫌いになるだろう。

 

 あ、エンターテイナーならメディア受けを良くし、不特定多数に愛想笑いできることも大事かもしれない。テレビにたくさん映って宣伝しないと商売にならないからね。

 藝術家とエンターテイナーは違っていて当然。

 

さて、傑物には常に「偏屈」「変わり者」という場所に追いやられる宿命を負うものだとはいえ、メディアがレッテルを貼り、ユーザーまでもそのレッテルをやすやすと受け入れてしまう現状は如何なものか。

 傑物には常にリスクを負っている。マーケティング優先で大衆消費材を生産しているわけではない。

 真の作品は必ず革命的な側面を帯びる。そのリスクを被るのは藝術家、創作者自身だ。

 

ニール・ヤング(Neil Young)→

傑物の至言-28 Neil Young(ニール・ヤング)

ミヒャエル・ハネケ(Michael Haneke)

傑物の至言-33 Michael Haneke(ミヒャエル・ハネケ) 

イーヴォ・ポゴレリチ(Ivo Pogorelich)

傑物の至言-39 Ivo Pogorelich(イーヴォ・ポゴレリチ) 

達も、今回のヴァン・モリソン(Van Morrison)にしても作品が発表され続けられるという恵まれた環境にいる。いくらメディアや関係者から疎まれても確実な支持者を獲得した仕事があるからこそ、傑物はさらに前進を続ける。

 

さて、本題のヴァン・モリソン(Van Morrison)だ。アイルランドに生まれ、

今じゃアイリッシュはクールだし、ヒップだ。一体、何が起こったんだろうな?私が60年代にロンドンに住んでいた時は、我々は虐げられていたんだ。

1993年 ヴィクトリア・クラークによるインタビュー(翻訳:染谷和美)

 

1964年  ゼムのリード・ヴォーカリストとして「グロリア」「ヒア・カムズ・ザ・ナイト」などのヒット曲を連発。

1967年 ゼムを脱退し、ソロに。

 大雑把に括ればロック、R&Bのジャンルで扱われるが、バック・ミュージシャンはほぼジャズ畑の人を起用。ブルー・ノートからアルバムでアルバムを出したりなどしているし。

 ジョニ・ミッチェルとやや似た立ち位置。ジョニ・ミッチェルの方がジャズ寄りだが。

 

 ヴァン・モリソン(Van Morrison)自身はフェイヴァリット・ミュージシャンとしてレイ・チャールズマディ・ウォーターズハウリン・ウルフを挙げ、ジャズも身近だったと言っている。

 ジャンル分けなんてどうでもいいが、取材に行くメディアはロック雑誌?ジャズ雑誌?と困るだろう。ネットは本当に便利だ。

アストラル・ウィークス

アストラル・ウィークス

 

 

1968年『アストラル・ウィークス(Astral Weeks)

超名盤だ。

 当初ヒットせずも評論家の評価高く、

2001年(33年後!)ゴールド・ディスク(アメリカでは100万ドル以上の売上が対象)に。

 

ヴァン・モリソン(Van Morrison)信者には、

総て素晴らしいという者から『アストラル・ウィークス(Astral Weeks)だけを認めそればかり聴いているという層が存在する。

かくいう私も『アストラル・ウィークス(Astral Weeks)だけを、ではないがいまだに他のアルバムよりも『アストラル・ウィークス(Astral Weeks)を聴く回数が圧倒的に多い。

 

本人は今も現役で新作を発表し続け、ステージで歌っているのに『アストラル・ウィークス(Astral Weeks)の事ばかり聞かれ(元々メディア嫌いなのに、ますます不機嫌になり)「あんなものはとうの昔の作品だ」と否定していた時期もあった。

 自分の作品を否定したくないだろうが、新しいアルバムを作っても過去の作品ばかりに固執されれば、そりゃ本人いい気はしないだろう。

それでも2009年には『アストラル・ウィークス(Astral Weeks)全曲演奏をハリウッド・ボールで演った。

 

1970年『ムーンダンス(Moondance)』全米29位

1971年『テュペロ・ハニー(Tupelo Honey)』全米27位
以降、一時引退状態ありながらも復帰、

1978年『ラスト・ワルツ(The Last Waltz)』バンド(Band)のラスト・ステージでも歌う。

 

ラスト・ワルツ 特別編 [DVD]

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魂の道のり Vol.2,Vol.3,Vol.4(完全生産限定盤)(DVD付)

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現在までにスタジオアルバム38枚、ライブアルバム5枚発表。

1995年 アイルランドのチーフタンズとの共演で最優秀ポップ・コラボレーション・ウィズ・ボーカル賞受賞

2008年『キープ・イット・シンプル』初の全米トップ10入り。
2015年『デュエッツ:リワーキング・ザ・カタログ(Duets: Re-working the Catalogue)』自分の曲カバーをデュエットで。本当に素晴らしいアルバム。

デュエッツ:リワーキング・ザ・カタログ

デュエッツ:リワーキング・ザ・カタログ

 

 

頑固でメディアから気難しいと称されながらも、

1993年 ロックの殿堂入り

1996年 大英帝国勲章OBE受章。

ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー第24位。

Q誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」第22位。

 

実娘と共演したり、頑固な最高のヴォーカリストは今もわざわざどこかの小さなライブハウスを選んで歌う。なんという73歳だ!

ヴァン・モリソン - Wikipedia

1945/8/31 現在73

ヴォーカリスト、作詞家、作曲家、ギタリスト

 

The Essential Van Morrison

The Essential Van Morrison

 

 

★こんなに有難い至言に遭遇させて頂きながらも、敬称略で書かせて頂くことをご本人、関係者にお詫び致します。

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『けだし名言、いや至言』

 

名言、いい言葉は、意外に誰でも口にすることがある。

 

話の流れでぽっと出る。日常的にもままあること。

 

それはそれで良いのだけれど、そのいい言葉はその瞬間だけの実感だったり、

 

はたまた誰かの借り物だったり、ということも多い。

 

 

 

私が紹介したいのは、一瞬の「名言」ではなく、

 

その人間の人生に裏打ちされた、その人間の奥底から到達した言葉。

 

それを「至言」と呼ぶ。

 

ただの名言、格言、金言ではなく、本質に迫る言葉が『至言』。

 

ただの有名人、著名人じゃなく、怪物級、規格外の人物が『傑物』。

 

 

その『傑物』の『至言』が放たれ、凡人にも何かが触発される。

 

泡立ち、鳥肌が立つ瞬間。そこから目を逸らすのを止めず考えてみる。