波尾の選択 傑物たちの至言に触れて

名言を超えた至言。生を突き詰める傑物達。至言に触れて触発された想いを綴ります

傑物の至言-14 Tarr Béla(タル・ベーラ)

 

長回しは)私の映画の言語です。俳優が逃げることができずに状況の囚人となるのです。スタッフ、キャストの全員の集中力、ベストな状態が求められ、カメラが回るそのことが何かを生むのです。また、映画は自分にとって、絵であり、リズムであり、音であり、人の目、動物の目であったりします。こういう長回しの映像を見ている観客はストーリーを追うのではなく、空間、時間、人間の存在を追い、それをすべて集約してその場で起きていることを感じる。そういうアプローチをすることによって、人間はより近づけると思うのです

     「映画.com」の取材より

 

傑物の至言-6 Theo Angelopoulos(テオ・アンゲロプロス) - 波尾の選択 傑物たちよ---至言から探る

の回でも触れたワンシーン・ワンカット」「長回しについて監督自らが語っている。

 

2011年『ニーチェの馬』ベルリン映画祭銀熊賞審査員グランプリ)、国際批評家連盟賞を受賞。154分

 

圧倒的な映像と音、馬の歩みから始まる。舗装などされていない道から終始砂埃を吹き上げる暴風の中、父と娘は馬車から馬を解き、馬小屋へ入れる。井戸から水を汲む。ジャガイモを茹で半分くらい食べる。寝る。起床し一着しかない服を着る。井戸から水を汲み、ジャガイモを茹で半分くらい食べる。決まりきった生活の所作が繰り返され、言葉は最小限にしか発せられない。

 暴風が強すぎて馬車を出すことを断念したり、友人が訪ねてきたりといった変化はあっても、父と娘の表情は変わらない。

 映画に安易なストーリー、メッセージを期待するなら悪いことは言わない、見ないほうがいい。

 

 圧倒的、最終的という言葉しか浮かんでこない。

映画の中の暴風に身体中がぐしゃぐしゃにされる。そうされながら、頭の中では格闘している。様々な問いが浮かんでは消える。

 その様々な問いに向き合いたくて、何度も見る。

 

非常に長い道のりでした。今回の作品に入る前に、これが最後の作品になると予感していました。自分の仕事は終わったと感じています。言いたいことはすべて語りつくしました  

        「映画.com」の取材より

 

 

 来日時に受けたインタビューでも「最後の映画」と語った。

 

1994年『Sátántangó(サタン・タンゴ)』438分(7時間18分!)が9月の公開される!

32年間でたった4本の撮った。

 本当にもう映画を撮ることはないんだろうか。

 

 

Tarr Béla(タル・ベーラ)

1955/7/21- 現在63歳

ハンガリーの映画監督、脚本家

 

 

ニーチェの馬 [DVD]

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『けだし名言』

 

ただの名言、格言、金言じゃなく、本質に迫る言葉が『至言』。

ただの有名人、著名人じゃなく、怪物級、規格外の人物が『傑物』。

 

その『傑物』の『至言』が放たれた奥底に迫りたい。