波尾の選択 傑物たちの至言に触れて

名言を超えた至言。生を突き詰める傑物達。至言に触れて触発された想いを綴ります

傑物の至言-13 Sam Peckinpah(サム・ペキンパー)

 

ーあなたの作品の過剰な暴力に対しての批判についてどう思いますか?

 あなた自身もブラディサムとして知られるようになりました

「人は何にでもレーベルをつけたがる。随分前にジャーナリストにそう呼ばれたのは確かだ。そしてみんなそれに飛びついた。でも人が血を流すということから目を反らすためのレーベルでしかない。いまではそう気付いてくれていることを願うね。

 でも僕は近年騒がれている暴力的なごみ映画の責任はとりたくない。

 暴力は悲しい詩だと思っている」

 

 

ーしかし映画の暴力が及ぼす影響も否定できないのでは?

 ナイジェリア内戦では兵士が『ワイルド・バンチ』を観て興奮したと聞きました。主人公のように死にたいと銃撃戦を展開した。

 それについて心配は?

「もちろんある。フランス人記者が実際にみたといっていた。あの映画を作ったのはギリシャ人の理論であるカタルシスを信じていたからだ。目にすることができれば清めることができると。

 間違っていた。ああいう事件がおきるとやろうとしていたことを潰されるのも同じ。明らかにカタルシスがいつも有効とは限らない。二度と起こしたくない間違いだ」

     サム・ペキンパー・インタビュー』動画より

  

 Youtube上でサム・ペキンパーがインタビューに答える動画がアップされている。しかも日本語字幕付き。

 しかし5分だけで明らかに前後もあるはずの途中の5分間が抜き出されている。

 インタビュアーはまるで兵士の残虐性を煽る映画を作る犯人を責め立てる刑事のような口調だ。

1961年映画デビュー作『Deadly Companions(荒野のガンマン)』

1962年『Ride the High Country(昼下がりの決斗)』

1965年『Major Dundee(ダンディ大佐)』劇場公開時123分、ディレクターズカット版152分

1969年 大傑作『Wild Bunch /ワイルド・バンチ』

を始め、暴力シーンばかりがクローズアップされ、

「Bloody Sam」ブラディ・サム=血まみれのサムと渾名された。

 

 いまも過激なテレビゲームの描写が現実の殺人や犯罪を造成するかの如き決めつけが成される構図は変わっていない。

 そうして映画やテレビ、ゲーム、小説の残虐なシーンに責任を押し付けることがジャーナリズムの役割なのか?

 その押し付けは人間考察が欠けた感想の域を出ず、ジャーナリスト自身の責任回避でしかない。

 そもそも人間の遺伝子に組み込まれている暴力性、残虐性は競争心、闘争心、生存本能と分かち難く在ることの断片だけを気安く誰かの責任に押し付けて済ませようという「似非」ジャーナリズムよ。

 

1970年 本人がベストと認める『Ballad of Cable Hogue(砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード)』

1971年『Straw Dog(わらの犬)』

1972年『Junior Bonner(ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦)』

1972年『Getaway(ゲッタウェイ)』

1973年『Pat Garret and Billy the Kid(ビリー・ザ・キッド/21才の生涯)』音楽:ボブ・ディラン

1974年『Bring Me the Head of Alfred Garcia(ガルシアの首)』

1975年『Killer Elite(キラー・エリート)』

1977年『Cross of Iron(戦争のはらわた)』

1978年『Convoy(コンボイ)』

1983年 遺作となった『Osterman Weekend(バイオレント・サタデー)』

 ペキンパーの映画はすべて傑作だ。

傑作に値する映画しか撮影しなかった。

 編集権を与えられず公開された映画や興行が振るわなかったいくつかには「失敗作」とされたものもあるが、

 世間が「名作」と呼びたがる起承転結が明確でウェルメイドな映画ならペキンパーじゃない監督の映画を見ればいい。

「名画100選」でもなんでも検索すれば、そんな基準で選ばれたリストが溢れ出てくる。

 「傑作」とは魂の奥底まで届く映像のカットやシーンが撮影された映画のことだ。バランスが悪かろうが、まとまりに欠けようがそんなことはどうでもいい。

 映画は映像芸術だ。映像で何を撮られたのか、それだけが問われるべきであって、「勇気」「夢」などと戯言でいいなら、いつでもどこでも24時間365日いくらでも手に入るだろう。

 

 傑作な映像を撮り続けたペキンパーは59歳で死んでしまった。

 本人監督の映画14作が残った。

2005年にはサム・ペキンパー 情熱と美学』というドキュメンタリー映画が制作された。

 

 

Sam Peckinpahサム・ペキンパー

1925/2/25-1984/12/28 (享年59歳)

映画監督、脚本家、俳優

 

 

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『けだし名言』

 

ただの名言、格言、金言じゃなく、本質に迫る言葉が『至言』。

ただの有名人、著名人じゃなく、怪物級、規格外の人物が『傑物』。

 

その『傑物』の『至言』が放たれた奥底に迫りたい。