波尾の選択 傑物たちの至言に触れて

名言を超えた至言。生を突き詰める傑物達。至言に触れて触発された想いを綴ります

優しい曲-8 「サッド・ソング」ルー・リード / Sad Song( Lou Reed)

「サッド・ソング」ルー・リード / Sad Song( Lou Reed)

1. この曲は

 傑物の至言-27でも取り上げたルー・リード(Lou Reed)
1973年の超名盤アルバム『ベルリン(BERLIN)』に収録。

 若い人たちには伝わらないかもしれぬが、当時はアルバム1枚をコンセプト・アルバムとして制作することがよくあった。
 一曲目に威勢のいい曲で初めて3曲目にシングル・カットするような自信曲を入れ、B面には1、2曲まぁまぁの曲を入れて後はとりあえずの曲で挟んで全8〜12曲で完成、ポップ・ミュージックの作り方とは違って、アルバム全体で1つのコンセプトを表現するために各曲が構成される。
 それぞれの曲がコンセプトに繋がっているのだ。 プログレッシヴ・ロック(Progressive Rock)=これも若い人には何のことやらかもしれぬが=のアーティストでは通常のアルバム制作姿勢であったが、本来クラシックの楽曲はほとんとすべてコンセプトで貫通していたし、ジャズ・ミュージシャンも取り入れ出し、ロックでもプログレ(プログレッシヴ・ロックをこう略する)以外のアーティストでも長いキャリアの中では1、2枚はコンセプト・アルバムを作っている。
 現在のように曲単位が切り取られ、ストリーミングなどでごちゃ混ぜに流される状況では曲順という概念が伝わらず、この方法は成立しないだろう。
さて、そのコンセプト・アルバムとしての名盤『ベルリン(BERLIN)』から一曲を取り出して云々するのは、暴挙。
 アーティスト側からすれば「違う、全体の構成要素なのだ」と叱られるかもしれない。 叱られようにもルー・リードは死んでしまった。叱られてもいいから生きていて欲しかった。
 それでも取り上げる。その訳はコンセプト・アルバムにも中心がある。核となるメインの曲がある。
『ベルリン(BERLIN)』の場合、それがこの「サッド・ソング(Sad Song)」だ。
 A面4曲、B面6曲の10曲構成のアルバム最後に置かれた7分弱

2. 音源



ライブでは8分を超えて演奏された。 

4. この曲の優しさ

 この曲がどうして優しい?
暗く、沈み込んでしまう。確かにそんな曲だ。
この文は、曲自体が優しいというよりもこの曲によって私自身が優しくなってしまう曲、ということなのでご勘弁を。
 スタジオで7分弱、ライブでは8分強と長尺の曲だが構成はシンプルでゆったりと、コーラスと(シンセの人工的な)ストリングスがたゆとう中でずっと「SAD SONG、SAD SONG」と繰り返される。それはこの曲自身のことではないだろう。
 昏い深淵に触れたに違いない、この曲を聴くと時間や場所を剥がされてしまう。
名前も過去も未来も、現在さえ無関係な状態に。
色も匂いも高さも感じられない。
 そして自分が魂を授かってこの世に在ることただ向き合う気持ちにさせられる。
 ルー・リード(Lou Reed)が「SAD SONG、SAD SONG」と歌う場所、それがこの世。
そこに私達がいるしかないのなら、優しくなるしかないだろう。
ルー・リード(Lou Reed)
1942/3/2-2013/10/27 (享年71歳)

5. カバー曲

 この曲のカバーを寡聞にして知らず。

(選、記*波尾哲)